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介護業界で働く理学療法士の阿部(@yousuke0228)です。
あなたは、高齢者になった時に要介護状態になりたいですか?
「いいえ」と答える方がほとんどだと思います。
私自身リハビリテーション専門職として働いていますので、その思いは強いです。
ただ明らかな疾病はなくてもいろんな要素が混じって体力や生活能力を低下させてきます。
要介護状態になる原因と言われる「老年症候群」という概念が注目されています。
それでは、チェックしていきましょう。
目次
老年症候群(Geriatric Syndrome)とは
高齢者の不健康寿命を増大させている原因として老年症候群が挙げられます。
必ずしも疾病ではないが、基本的な生活機能(ADL)を障害し、生活の質(QOL)を下げる状態を指します。
簡単に言えば、「加齢による身体機能低下に伴う生活機能障害」のこと。
わかるようでわからない定義です…。
高齢になるに連れて単一の病気ではなくいろいろな症状が出てくるのは、医療介護職のみなさんであれば経験済みでしょう。
要介護などになる原因(平成22年人口動態統計)
1位:脳血管障害 21.5%
2位:認知症 15.3%
3位:高齢による衰弱 13.7%
4位:関節疾患 10.9%
死亡原因(平成22年人口動態統計)
1位:悪性新生物(ガン)29.5%
2位:心疾患 15.8%
3位:脳血管障害 10.3%
4位:肺炎 9.9%
死亡原因と要介護状態になる原因を比較するとこれだけの違いがあります。
生命の質(QOL)のことを考えれば、ただ長生きできればいいわけではなく、健康寿命を伸ばすことが重要ですね。
認知症や関節疾患などの直接的に生命に影響がなくても、QOLを著しく低下させるものが多くある。
そこがポイント。
老年症候群の代表的な症状
老年症候群の代表的な症状としては
大きく分けると
- 急性疾患症状
- 慢性疾患症状
- 廃用症候群
の3つに分けられ、これらが重なりあってある状態のことです。
急性疾患症状
- めまい
- 息切れ
- 腹部腫瘤
- 胸腹水
- 頭痛
- 意識障害
- 不眠
- 転倒
- 骨折
- 腹痛
- 黄疸
- リンパ節腫脹
- 下痢
- 低体温
- 肥満
- 睡眠時呼吸障害
- 喀血
- 吐下血
慢性疾患症状
- 認知症
- 脱水
- 麻痺
- 骨関節変形
- 視力低下
- 食欲不振
- 浮腫
- やせ
- しびれ
- 言語障害
- 悪心嘔吐
- 便秘
- 呼吸困難
- 体重減少
廃用症候群
- ADL低下
- 骨粗鬆症
- 椎体骨折
- 嚥下困難
- 尿失禁
- 頻尿
- せん妄
- 抑うつ
- 褥そう
- 難聴
- 貧血
- 低栄養
- 出血傾向
- 胸痛
- 不整脈
これだけのものが絡み合っています。
一般的に加齢によって当てはまる項目が増えていきます。
高齢者に多く見られ、医療・介護・看護のケアが同時に必要な、症状・所見の総称。
在宅で働いている方にとってみては、このいろんな状態が重なり合う状況が普通になっているでしょう。
例えば、転倒してしまうと…
骨粗鬆症と連動して大腿骨頸部骨折を引き起こしたり。
転倒後の恐怖心により活動範囲が狭くなる「転倒後症候群」も問題。
このように連鎖的にも関係してくるのです。
老年症候群の特徴は
- 明確な疾病でない
- 症状が致命的ではない
- 日常生活への障害が初期には小さい
そういった特徴があるので、医療側にも対応の一定水準がなく「年のせい」と言われておしまいということも。
年のせいで片付けられてしまうと、当事者側も問題意識を持たないわけですから、この問題は一生解決されないわけです。
なぜ「老年症候群」を予防するのが大切なのか?
たかが転倒の怖さ・・・
若い人にとってはたかだか転倒と思うかもしれない。
ただ高齢者になると、そういうわけにはいかないのです。
転倒と骨粗鬆症が連動して大腿骨頸部骨折を引き起こして入院。
恐怖心により活動範囲が狭くなってしまったりと問題だらけ。
だからこそ予防なんです。
社会保障費との兼ね合い
もちろん国のお財布のお話も。
これからさらに高齢者が増えるという日本において、高齢者がいろんな病気に罹ってし待って病院にかかる・・
これはもうお金がかかりすぎるんです。
であれば、こういった状態にならないように何か「水際」でも対策できないか・・ということ。
一般的に治療より予防の方がコストはかかりません。
国の視点でもコスパを考える時期になったのです。
ハイリスクアプローチとポピュレーションアプローチという手法もありますが、まさに考え方を変えるタイミング。
リンク:健康日本21で学ぶ高血圧のポピュレーションアプローチ〜理学療法士に求められる視点〜
老年症候群の評価
高齢者総合的機能評価
前述のように様々な状態が絡み合うことからも、疾患評価(普遍的評価)だけでなく、包括的・総合的に見ることがポイントです。
- 日常生活活動度(ADL):最低限の生活の自立
- 手段的日常生活活動度(IADL):家庭での生活手段の自立
- 認知機能:物忘れ,認知症の程度
- 行動異常:いわゆる問題行動,認知症の周辺症状の評価
- 気分:抑鬱,不安,意欲
- 人的環境:家族・介護者の介護能力,介 護負担
- 介護環境:家庭の物理的,経済的環境, 介護サービスの利用
以上を総合的に検査,評価し,個人の生活個別性を重視したケアを選択する方法が取られています。
CGA7
最も簡便な評価としてCGA7があります。
- 外来または診察時や訪問時に、被験者の挨拶を待つ
- 「これから言う言葉を繰り返して下さい(桜・猫・電車)」「あとでまた聞きますから覚えておいて下さいね」
- 「ここへどうやって来ましたか?」「普段一駅離れた町へどうやって行くかを尋ねる」
- 「先程覚えていただいた言葉を言って下さい 」
- 「お風呂は自分1人で入って、 洗うのも手助けは要りませんか?」
- 「失礼ですがトイレで失敗してしまうことはありますか?」
- 「自分が無力だと思いますか? 」
これが今一番簡便な評価とされています。
ここで引っかかるようだったら、各種の細かい検査に進んでいきます。
参考:健康長寿診療ハンドブック
老年症候群は介護予防で防ぐ!!
ということで老年症候群を予防していく対策です。
介護予防とは
介護予防とは「高齢者が要介護状態に陥ることなく、健康でいきいきとした生活を送ることができるように支援するここと、また、すでに要介護状態であっても重度化を防ぐこと」と定義されています。
介護予防は、介護保険の車の両輪として2006年に制度化されています。
なぜ介護予防が重要なのか?
ホリエモンチャンネルでも、堀江貴文さんも言及していました。
医療介護職必見の「ホリエモンチャンネル」
堀江貴文さん@takapon_jp が見る介護業界。「予防・健康増進」が重要⚡️
今の問題も大事だか、将来的に要介護者を増やさないことを実現するために私たちには何ができるか!?https://t.co/E9TV3UMX5U pic.twitter.com/xL08O253M4
— 阿部洋輔(内向的な理学療法士ブロガー) (@yousuke0228) September 21, 2017
堀江貴文さんは現在、一般社団法人予防医療普及協会の活動をされています。
介護業界の人員不足や財源の問題など様々な問題がある中で、抜本的な対策としては、国民が要介護状態にならない・させないことが大切だと。
この要介護状態にさせないことというところが老年症候群に繋がってきます。
国や地域の取り組み
- 介護予防事業
- 新しい介護予防・日常生活支援総合事業
これはもう国が介護保険として進めています。
要支援の方々のサービスは市区町村単位で行うというマイナーチェンジが起こっています。
民間が行う介護予防
カーブス
みなさんご存知のカーブスだって民間でやっている介護予防です。
方法は12種目のマシンやストレッチを交代に行っていき30分運動するというもの。
行動変容を引き起こしたい時に、1日30分っていうのは非常に敷居が低くなりますよね。
フィットネスクラブ
コナミやセントラルスポーツなどの企業もどんどん介護予防に参入しています。
リハビリテーション業界もそういった部分をどんどん取り込んでいかないと、診療報酬・介護報酬ととも・・共倒れなんてこともあるかもしれません。
社会保障費を減らすという大義名分が国にはありますから、さらにフィットネス関係や自費でのリハビリビジネスがどんどん進んでいきます。
まとめ
老年症候群は加齢による身体機能低下に伴う生活機能障害です。
そしていろんな機能のちょっとした低下から始まることが多いから、余計に対策が後手後手になりやすい。
これって高齢者の方々だけでなくて、誰にでも言えること。
理学療法士として予防に対してできることが沢山ありますね。
介護予防ならこの本がオススメです。
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阿部洋輔
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